栗はどこにでも生えていて、とても馴染みのある木です。
子供の頃小さな山栗を拾って家に持って帰って祖母に茹でてもらい食べた事を思い出します。
家には食用の大きな栗の木があり毎年立派な実をつけるますが山で拾ったものは食用のものとは比べ物にならないくらい小さい。でも食べてみると外見に反して味も濃くて甘くて美味しいです。
何より人の手を借りず、自然の中で厳しい競争に生き残った生命力がその小さな実に詰まっている気がします。
山栗を試してみるのも面白いです。ただ山栗は猪の大好物ですし、落ちた栗は人より先に虫が卵を産みつけている事もよくあります。自然は競争がいっぱいですね。
さて家具材として使う栗はその小さな実をつける山の栗です。
栗材の最大の特徴は水に強く腐れにくいことですがこれはタンニンというアクを多く含んでいて雑菌が繁殖しにくいためです。
又折れにくく、反りにくく建築材としても家具材としてもとても優秀なため昔からよく使われます。
古来、人の暮らしと共にあるsubstinableな材料と言えるでしょう。
だからこそ以前から栗をキッチンに使ってみたいと思っていました。身近に生えているので輸送コストも低いし、日本中の木材市場で多かれ少なかれ木材として扱われています。
しかしアクを多く含むため水をよく使うキッチンでは自然塗料ではグレー色に変わってしまいます。
その他オイル仕上げにすると他の樹種に比べて木目がはっきりと浮き出てしまい和風な印象が強くナチュラルな仕上がりにし難い事もありました。
前置きが長くなりましたが、それらの特徴を活かして解決できたのが
『白のキッチン』と『黒のキッチン』です。
『白のキッチン』は
白くて木目も抑えてスッキリとした表情に仕上がりました。
薄塗りのウレタン塗料で限りなく艶が出ないように、まるで白木のような仕上げにしました。明るくて和風になりすぎていません。
時間と共に黄色みは帯びてきますが、グレーになることはないと思います。
https://k-imagawa.co.jp/post-2081/
施工例コンテストでこのキッチンが入った空間が最優秀賞に選ばれました。
明るい仕上げが邪魔をしなかったのかもしれません。
『黒のキッチン』は
アクの強い栗の特性を利用して草木染めの技法を使い黒く染色しました。
塗料ではなく染色なのでそれぞれの木が持つタンニンの量や触媒によって黒の色の出方も変わります。
黒染めについては改めてご報告する予定なので詳細は後日とさせてください。
黒く染める事でモノトーンでスタイリッシュな仕上げとなり今までの栗のイメージが一新され、新しい物語が始まりそうです。まだまだ進化させていきたいキッチンです。
今までキッチンにあまり使われていなかった栗ですが、現代の空間にマッチするキッチンができそうで、とても楽しみです。木材の特性を活かした作り方とその良さを伝えるのも大切な仕事ですね。