KitoBitoオーダーキッチンの原点を見つめなおして

初めの木製オーダーキッチンを作ることになったきっかけは、新築の家に家具を頼んでくださったお客様に、『キッチンも作らせてほしい。』とお願いしたことでした。今でこそ、木のキッチンは見かけるのですが、当時は、木で作るなんて大丈夫?と思われていました。

今考えると、一度も作ったことが無かったのにお願いをするなんて、何とも若さゆえの勢いだったと思います。その勢いのまま、見本としてウォールナットのアイランドキッチンを製作しました。もちろん初めてなので、キッチンとして成り立つように、家具以外の勉強に時間がかかりましたが、若いので徹夜もいとわず一生懸命作りました。そして、それを見ていただいて「これなら、お願いします。」と返事をいただいたのです。

あれから約15年。仕事場のキッチンとして、その見本のキッチンを使っていたのですが、新しい見本を作らないといけないと、このキッチンを手放すことに決めました。偶然にも次なる使い手を見つけることができ、長年使いにくかった所を直し、これまでの感謝と、次の使い手のために、隅から隅まできれいにしました。傷こそあるものの、木の選び方から丁寧な仕事まで第一号として誇らしいキッチンだと眺め倒しています。経年変化とオイルの塗り直しで、ピカピカ輝いて(見えるほど)いい色になりました。あの時、丁寧に作ったキッチンは、これからもこの仕事を続けていこうと思う私達に、『長く使ってもらうためには、こうでなきゃ!!』、と再度教えてくれているようです。オーダーキッチンを作っていくための原点を見つめ直す最高の機会でした。今は愛着のあるこのキッチンとの別れがつらく名残惜しく、次なる使い手の元に行く前に、もう少しだけ愛でていようと思います。嬉しいことにそう遠くない所に住む次の使い手も、大切に大切にしてくれることを約束してくれているので、安心しています。寂しくなったら会いにいかせてもらおう。

末永く大切に使ってもらえるオーダーキッチン作りをこれからも精進していこうと思います。そのためには、できるだけオール無垢材で作った方がいいんだけどなぁ…と、少し心の中でつぶやいてしまいますが…