古きを愛でる 古民家のキッチン

広島のホルツバウハウスさんから『築100年以上たつ古民家のリフォームをするのですが、お客様にKitoBitoさんのキッチンをご紹介したら、とても気に入ってくださっているので、一度伺っても良いですか?』というお電話をいただきました。遠いところからわざわざ来ていただくことになると、とても恐縮してしまうのですが、実際見てもらわないと、『そう、そう、これ!こんなキッチンなの。探していたのは。』とかいう風にならないので、ホルツバウハウスのMさんとお客様と親戚の方でいらっしゃってくださいました。

皆さんでいらっしゃったときに、文子さん(仮名)は展示している”Joinery Kitchen”をご覧になって、というよりも最初からホームページで見てくださっていて気になっていたそのキッチンをご覧になると、静かに『これがいいの。」とほほ笑んでくださいました。節のある木の感じも、気に入ってくださりました。

すぐに気に入ってくださったので、どんな仕様にするのかの相談をしていくことになりました。一緒に来てくださった親戚の方が、お仕事柄キッチンについてとても詳しく、文子さんのキッチンや持っているものもよくご存じだったので、思いっきり頼りにしながら、大体の案を決めていきました。L型キッチンだったこともあり、収納を重視しようか、使い勝手を重視しようかは、この日は決定をせず、両方の見積と図面を後日お渡しすることにしました。

L型キッチンの場合、毎回頭を悩ませるのはコーナー部分。収納にしようか、それとも空洞にしてしまおうか。フル活用してお鍋など入れるようなシステマティックなコーナー引出しを考えたりもしたのですが、最終的に出した文子さんの答えは…コーナー部分は空洞にしてしまいまうことでした。その代わりといってはなんですが、シンクの下は使いやすい引き出しに。コンロ右側の作業スペースの下も、4段の引き出しに。実際お鍋などは、シンク下やコンロ下に沢山入るだけでなく、壁面にもたくさん置ける場所があったのです。このキッチンは、これが一番使いやすい収納の使い方だったんだと思います。

このキッチンの使い勝手について、写真撮影に伺った時にいろいろ教えてくださいました。何度も言われていたことは、このL型キッチンは、とっても使いやすいようです。一歩二歩横に動けば、シンク⇔作業スペース⇔コンロがあるので、無駄な動線がなく、お料理がとても効率よくしやすいと嬉しそうに、教えてくださいました。シンク横にはポットやレンジ、コンロ横には冷蔵庫、できたものは振り返るとテーブルが。なるほど、かなり効率がよさそうです。

古いテーブルは、今回ご自分でごしごしとあまり気に入っていなかった塗装をとられたそうです。すると!とても雰囲気の良い木そのものの味のある素地が出てきたそうです。もちろん元々の素材が良いものであったからということなのですが、この部屋にはこのテーブルでなければならないものとなっています。
そうそう、今回のリフォームで、お料理を作っているときにお庭をよく見るようになったそうです。私たちも設置作業中、真っ白の蔵の壁と空の青そして、キッチン前にある、まゆみの木のコントラストが美しく、何度も何度も見入ってしまいました。文子さんも、料理するのが楽しくなったのよ、と嬉しそうに教えてくださいました。

こんなアイディアはキッチンを使いやすくしてくれます。

ボトル調味料やスパイスを収納。あまり多くは入りませんが、いつも使うものを使いやすい場所に入れておくことができます。

洗い物は、シンクの中の洗いカゴに。すぐ洗い、すぐ拭く習慣があれば、これくらいで足りるそうです。

シンク上の照明は、この絶妙な場所につけたスイッチでつけたり消したりできます。

ずいぶん前に大切にとっておいたタイルを、キッチンにいくつか埋め込んでもらっています。手焼きのアンティークのタイルは、現在の製品にない味わいがありました。

この欄間も大切にとっておいたもの。これもどこに使うかは、もう頭の中にあるようです。古い家にはお家の人にとって、お宝が沢山残されていますね。

太く、しっかりとした梁が、部屋の重厚さを感じさせてくれました。現代の家では見かけることがない程の太さでした。

ここから見える風景が大好きなので、建具は古いのを残したまま、二重サッシにしてもらったそうです。

古い建具、新しいタイルの中に大切にとっておいた古いタイル。歴史あるものを使いながら使いやすくなった場所がここにも。

ここにも古く大切にしていたものが沢山飾られていました。外灯を家の中の土間に移し、これからも末永く家をともしてくれるでしょう。