普通のシンプルな木のキッチンが欲しい
ホームページを見て問い合わせをいただくことが増えてきたある日、Kさんから一通のメールをいただきました。
『来年5月に自宅を新築するに当たり、キッチンをあれこれと検討しております。主人と一緒にショールームなどでキッチンを色々と見たりしたのですがピンとくるキッチンに全く巡り合えず、どうしたものかと悩んでいたのですが
ネットであれこれと検索するうちにこちらのサイトに辿り着きました。思わず主人に「私が欲しいキッチンって、これ!」と叫びました。 でも、大阪なんです。やはりオーダーキッチンを作って頂くのは無理ですよね、遠いですよね。諦め切れず、ご連絡差し上げてしまいました。』
短いメールに熱い思いが込められていて、私たちも感激して何度も何度も読み返したのでした。
遠方のお客様のお仕事もしたことがあったことと、大阪と言ってもここから2時間30分~3時間で着くので距離はさほど問題ない事をお伝えしました。 その他、私たちと工務店さんとの関係も大切なのでそのことにも少し触れさせていただいたのでした。
想いを聞き、それに共感して全てははじまったオーダーキッチン作り
すると、すぐにお返事をいただきキッチンに対しての想いを伝えてくださったのです。
『豪華な設備のキッチンが欲しい訳ではなく、おしゃれなキッチンが欲しい訳でもなく
本当に普通のシンプルなキッチンが欲しいんです。
木の温かみがあって、大工さんが作ってくれるような素朴さがある・・・ 希望はそれだけなんです』
共感できる想いが伝わってくるには、十分な言葉でした。 『ふつう』という言葉に対する『ふつうのキッチン』を探しても、簡単には見つからないものです。 想い描く『ふつう』の意味と、一般的に目にするモノとイコールになっていない時があるな、と思っていました。 効率、リスク、利益、色々なものがあいまった時に、ふつうがふつうでなくなって、そしてそれが世の中のふつうとなっていくのでしょう。そうした時に私たちのキッチンを見つけて頂き、熱い思いのメールを送って下さったのだと、感無量でした。
工務店さんにも私たちの事を伝えてくださり、気持ちよく了承していただいたことや、目安となるキッチンの金額もだいたいわかってもらえたのち、一度私たちの所へお越しくださる予定を立てました。大阪と岡山は程よく離れているためか、『すでに主人は、家族旅行モードに入っています。』と楽しみにしていてくださり、嬉しく感じたのです。近隣の津山では、ちょうどB級グルメのホルモンうどんが大人気でしたので、せっかくの機会にと、それもお知らせをしておきました。
そして、来ていただいた時に潤滑にお話ができるように、前もって家の平面図を送ってもらい、私の方から何点か質問に答えて頂きました。その時『何もかも美しくととのえられた感じより生活感みたいなものがある程度感じられる家にしたい。』という言葉をもらっていたのですが、数か月たったキッチンを見に行かせていただいた時に、この言葉の通りの、それ以上のキッチンになっていました。Kさんの頭の中には最初からこのイメージがあったに違いありません。
KitoBitoでの打ち合わせの日
打合せの日を迎えました。 Kさんとはメールでのやり取りを何度か繰り返していたのですが、初の対面です。いつもこの日は緊張をします。 きっとKさん家族も同じだったでしょうね。
やさしい笑顔のKさんとショールームに置いているKazeを見ながら、色々なお話をしていきました。最初は、ご主人も子供さんたちも一緒に話に参加していたのですが、キッチンはKさんの活躍の場であるのでKさんとの話がだんだんと増えてきました。 ちょうど、私たちの子供もいたので2階で一緒にゲームをしたり、遊んだりと楽しんでくれていました。その間に… キッチンのお話をいろいろ伺うことができました。
コンロカウンターは、Kazeのようなシンプルなものを。そしてシンクカウンターは足元を見せないでいたいので、Kazeとは違い背板のあるタイプに使用ということになりました。予算に合わせていくには、どうすると雰囲気をそこなわないで、できるかという事なども、詳しく説明をしたのです。シンプルなキッチンを希望されていたので、それほど長いことキッチンのお話をしては無かったと思いますが、無垢の木の手触りや質感に存在感など来なければわからなかったことを、十分に感じて頂けたと思います。
キッチンのポイントは、ブリックタイルで。
その後、メールや電話で打合せを重ねていき、設備面で私たちのわかる範囲のアドバイスをさしあげたりしました。その中で、とても嬉しかったことが。コンロの壁面をタイルでされたいと伺った時に即座に思い出したのが、平田タイルという会社の事でした。
鳥取にあるスマイル空間という工務店さんの家で使われていたタイルがあまりに素敵で、どこのものか尋ねた時に、大阪の平田タイルのものなんですよ、と教えてくださっていたのです。
Kさんにもそのことを伝えると、すぐに気に入ったもののサンプルを取り寄せたり、何度も見に行かれたりもしたそうです。
選ばれたタイルと、ステンレスの天板と木のキッチンがお互いをうまく引き立てていて、生活感も見せながらシンプルでおしゃれな空間を作り出していました。最初にあたまに描いていた空間です。
ある日、Kさんからイラスト付きのメールが届きました。
『ご無沙汰しておりますが、KitoBito家の皆様お元気でしょうか。以前に少しお話をしていたキッチン横の収納棚の図です。なんだかこんな簡単な棚を、オーダーメイドの家具屋さんにお願いするのは、本当に申し訳ないのですが…』
早速イラストを見ると、コンロ横の家電などを置く棚の事でした。私たちはこういう限られた場所に置く家具作りが得意なんですよ。
家電の寸法や置きたい場所を伝えてもらい、今度はこちらからイメージのイラストを送りました。そのイラストは、Kさんのイメージと少し違ったようで、再度言葉で言い表すのが難しい中、丁寧に思い描いているイメージのメールを頂きました。
そして、幸運にも次は双方のイメージが一致したのでした。それが左の収納棚です。 私たちも、とても気に入ったものになったのでした。
キッチンと初めて会った日の想いを。
キッチンを撮影した後日、Kさんが思いかけないメールを届けてくださりました。
『キッチンが納品された日のことを私は一生忘れないと思います。
この家でずっと生きていく覚悟みたいなのが初めて出来た日だったと思うんです。
あの日、出来上がったキッチンを見て、
これから、楽しい時も悲しい時も、どんな時も家族の為にここで料理を作るんだなって。
このキッチンと一緒に生きていくんだなって・・・
大げさかも知れないけれど、そう覚悟が決まりました。
もう前に進むしかないって。
Kitobitoさんのキッチンだから、そう思えたんだと思います。
心を込めて丁寧に作って頂いたから、そう思えたんだと思います。
本当にありがとうございました。』(途中、省略)
このメールを読んだ私たちは、心からこの仕事をしている喜びを感じたのです。
『私たちのキッチンを、迎え入れてくださった日に
色々な思いを胸に大切に大切に感じてくださり
本当にありがとうございました。
住まいを移すと、気持ちの整理にも時間がかかる事、私も何度も経験しています。
だから、痛いほどよくわかります。
そんな時に、新しい気持ちに切り替えるのに、私たちが微力ながらお手伝いできた事、
本当に嬉しかったです。そして、その気持ちを伝えてくださり、感激しました。
このキッチンは、何か新しい事のスタートになったと思え、私たちも本当に嬉しかったです。
そして、嬉しいメールをありがとうございました。』
Kさんとの打ち合わせは、メールや電話がほとんどでしたが、そういった状況の中で想いを一生懸命伝えてくださりました。 家族と共に歩んでいくキッチンの意味が本当によくわかった気がしました。
何があっても、そこで家族の為に食事を作る。 簡単で当たり前の様ですが、本当は大変なことです。その覚悟をした。私たちのキッチンを見て。
楽しいこと、家族とのこと、笑った時のこと、つらくてもそれを乗り越えた時のこと、
全てのときを、このキッチンと共に育んでください。
とても丈夫に作っています。一生を共にしてくださいね。