楢と黒皮鉄の男のキッチン

ある日、KitoBitoにキッチンのご相談にいらっしゃったのは、すらっとした男性でした。古い町並みが残る風情のある町に、その町並みに合う家を建てられる予定であることや、家具のようなキッチンを求めている事、趣味の車やバイクの話など色々とお話をしてくださいました。

秋田産楢材と黒皮鉄の組み合わせ。鉄の強さ・無垢の木の優しさの相乗効果で質の高いキッチンになった。

2回目の相談には設計事務所の方と一緒に来られました。その方がKitoBitoのキッチンの事例を細かく見てくださっていて、「黒皮鉄のキッチンを楽しむ」のキッチンの雰囲気が良いのではないかと提案してくださいました。クライアントとは2度目の家づくりなので、どんなタイプが好みか、どんな生活を送りたいかなど、望みをよく理解していた設計事務所の方でした。クライアントも黒皮鉄を使ったキッチンは他に見たことのないタイプで、かっこよくなりそうと、嬉しそうでしたので、その方向性でキッチンの話を進めることになりました。

鉄・ステンレス・木 全て無垢。

それからKitoBitoとしての提案は、二つにしました。引出と開扉(中は棚板)の収納と、引出しのみで構成される案です。黒皮鉄を使った案の方がきっと好みだろうと思ったのですが、使い勝手を優先すると引出し収納の方が使いやすいので、2種類作りました。クライアントは迷うまでもなく、黒皮鉄を開扉に使う案だったのでした。今考えても、やはりこの案で良かったです。選んでくださったことに感謝です。そこから大きさや使い勝手とデザインを相談しながら、進めていきました。

車やバイクが好きなので鉄の扱いには、KitoBitoより慣れているクライアント。鉄を使うことに不安はなかったようです。後日伺った際に、水を扱う場所なのに黒皮鉄には錆が来ていないので、どのようなお手入れをしているか尋ねたところ、「う~ん、すごく簡単なんだ。車のメンテナンスで使う錆止めをシュッとして薄く伸ばすだけ。」といとも簡単そうに言われていました。

キッチンとしての役割だけではなく、吊戸棚に気に入った器を飾ることにより、全体的に家具のような存在にすることができました。
この節のある楢材を、黒皮鉄と組み合わせることにより、無骨さを感じます。そしてキッチンのある場所のイメージを統一したことにより、男性のためのキッチン空間ができあがりました。かっこいい!

シンクはこだわりの手板金シンク

吊り棚には、型押しガラスの建具をポイント的に入れています。このガラスは、この土地に元々あった建物に使われていたガラス。ぜひこのガラスを使いましょう、と設計事務所の方からの提案でした。それをガラス屋さんで切ってもらい、正方形の建具の中に入れて作りました。古いガラスは、今では国産品にはない型押しガラスや吹き板ガラスがあったりするので、古い家を解体するときは、次の世代を見守ってもらう意味も込めて使用されることをお勧めします。

photo:MIKAINADA

L型アングルの引手は、見た目よりずっと使い心地がいいです。開扉は丸い穴を二つ明けたが、こちらは見た目優先となってしまいました。オーダーキッチンを作る時、見た目優先の場合と、使い勝手優先の場合があります。クライアントと打ち合わせをしているときに、キッチンをどんな風に使っていきたいかお尋ねして、何を優先させるか決めていきます。壁付けキッチンの場合は、この使う側が見えるので、見た目は非常に重要なポイントとなります。

実は、黒皮鉄の開扉の箇所は、少し奥行が浅いのです。黒皮鉄に水が少しでもかかりにくくすることが第一の目的だったのですが、出来上がってみると、奥行感がありバランスの良い仕上がりになりました。

内側も全て無垢材での仕上がり。扉を開けたときも、無垢の美しさを感じることができます。

photo : MIKAINADA

PHOTO by YOKOINOUE (ただし photo:MIKAINADAを除く)