タンス工場からのリノベーション

古い家のリノベーションは自然素材の壁付けオーダーキッチン

はじめてお会いしたYoshikoさんは、優しい笑顔の持ち主でした。私たちの仕事場へ永井建設の永井さんと一緒にいらっしゃって、これから始まる家づくりにキッチンを見に来てくださった時のことです。私たちの話も、しっかり聞いてくれながら、自分がどうしていきたいか模索をしているようでした。しかし、そうはいいながらも何かもうどうしたらいいのかを、よくわかっている方だったのでしょう。永井さんは横でそのYoshikoさんの想いを、ふんふんと、ニコニコして聞いていました。既にその想いを受け止めていたんでしょうね。Yoshikoさんと永井さんのおおらかに優しく包み込む空気感が、この最初の時から心地よかったことを思い出します。

古い合掌造りの『タンス工場』に住む思い、そして思いを大切にしてくれた人たちとの出会い。そこに生まれた幸せの住まい。

使い慣れた壁面収納は必須です

家を建て替えるより、ご両親の残してくれた『タンス工場』の2階の住まいで住み続けたい。雨漏りがひどいので、それを直して少しでも気持ちよく住み続けれたら嬉しいです。と話してくださりました。
キッチンへのご要望は、使い慣れた壁面の棚があればいいこと、シンクの下はオープンで良いよい、コンロの下の収納もオープンが良いことぐらいでした。

1Fでは、車が入るスペースづくりと、2Fを支えるための入念なチェック。

2Fでは現在の状態を確認しながら、図面だけではわからなかったところを相談しているようでした。

無垢のキッチンで生命力を感る

生命力にあふれた楢材を気に入っていただいたところからプランのスタートでした。使いやすいように引出しもオープン棚と共に組み合わたご提案をしました。最初は、以前使用していなかった、引き出し収納に不安があったようですが、実際に私たちのキッチンで使用中のものを見ていただいたり、いままで製作したキッチンの写真をみてもらったりすると、なるほど、と安心され引き出しも組み合わせることに。

キッチンとテーブルの間のカウンター

キッチンとの間にあるカウンターは、壁面につけたI型キッチンの場合かなり重要な役目を果たしてくれます。こっちからもあっちからも使えるオープンな場所はとても便利です。

ふすま貼りは施主施工!

普段からふすまの張替を自分でされていたYoshikoさんに、津山市横野で手すきの和紙を貼ってみてはどうかと提案された永井さん。一緒に工房まで行かれて、気に入ったものを見つけてきていました。リノベーション中に伺うと、職人のように慣れた手つきで和紙をものすごく熱心にそして楽しそうに貼っていくYoshikoさんの姿が。家作りに自分も参加できる喜びを感じているYoshikoの姿でした。このふすまの配色のアイディアも素敵ですね。

心を交わす

「担当した大工はでき上った家の中を見たことが普段見ることがないのよ。」という永井さんの言葉に驚いたYoshikoさんは、職人さんたちを食事に招いてくれました。お日様がキラキラとはいり、気持ちよく毎日の生活が送れる幸せを、職人さんたちに伝えることができて嬉しそうでした。もちろん職人さんたちも、自分たちが一生懸命した仕事がどういう風にお客様が喜んでくれているかを感じることができ、同様に嬉しそうでした。

小さな手紙で心と心を交わす日々

キッチンの一部を設置して、翌日も作業のため行った時でした。カウンターの上にあったのは、数枚のお手紙。大工さん宛や永井さん宛、そして…『米戸さんへ。素敵なキッチンをありがとうございます。タイル壁とも会って嬉しいです!完成が楽しみ☆*コンロの下の棚の高さは、半々、または上が少し狭い感じが良いです。ご経験上、もっと便利な割合があればお任せいたします。よろしくお願いいたします。』と私たちにも、手紙がありました。

そのまた翌日にも。手紙からは温かみを感じ、手書きのぬくもりが伝わってきます。心と心が通うにはやはり人の力ですね。

『米戸さんへ。キッチンのことお世話になります。日々、驚きの連続ですが、キッチン側のお部屋も次第に形になってきて楽しみです。作業台のコンセントですが、いろいろ考えましたが窓側がよいと思います。(側板の外なら動線からみてじゃまにならないし、内側なら右利きなので差し込みやすい)キッチンの高さはおすすめの83㎝でお願いします。時々ベリーさんの写真を見てなごなごしています😄』

そういったお手紙を毎日のように職人さんたちもいただいていたそうです。普段は顔を合わせるチャンスが少なかったそうですが、きっと朝出勤したときにお手紙を楽しみにしていたのではないでしょうか。

そしてご招待

職人さんたち、すこし緊張した面持ちです。

リフォーム前の写真を撮り忘れていた、と言われていたことを思い出し、私たちが打ち合わせ時に撮っていたものを送った際にいただいたメールです。そのころの空間もご両親と過ごした大切な場所。リノベーション前の空間の撮影も心を込めて行おうと思いました。

『米戸さんへ。写真ありがとうございました。何だかとっても懐かしい。これまでの生活と時間が詰まった風景でしたから。昨日から新しいお部屋で生活しています。まだ、荷物たちは箱の中ですが、ちょっぴり生活感が出てきたでしょう。近い内に、きっとおいでくださいね。広いので、何人でおいでいただいても大丈夫!楽しみにお待ちしています。』

そして、この後何度もお邪魔させていただきました。いつもいつも笑顔で迎えてくださり、空間だけでなくその人柄の居心地の良さを感じてしまい、長居してしまいます…お邪魔なのにごめんなさい。でも本当に心が浄化されるような気がするのです。またお邪魔させてくださいね。